現代においては、アーモンドアイやリスグラシューといった、牝馬たちが日本競馬を席捲しており、牝馬最強時代に突入しつつあります。
牝馬たちが一流牡馬たちをなぎ倒していく姿は、見る者を魅了し、競馬をいっそう面白くさせます。
ここでは、牝馬に関する基礎知識から、レース予想に関するものなど、あらゆる情報を紹介していきます!
馬券に役立つヒントも、データとして紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
牝馬とは?
まずは牝馬の基礎的な情報からまとめていきます。
牝馬の読み方
牝馬の読み方は、「ひんば」で、女馬のことを指します。
反対に、男馬のことは牡馬(ぼば)と言います。
牡馬の中でも去勢された馬を、セン馬と言います。
繁殖牝馬とは?
繁殖牝馬(はんしょくひんば)は、競馬を引退し、母馬になる牝馬のことです。
反対に、引退した繁殖用の牡馬のことは、種牡馬(しゅぼば)と言います。
種牡馬入りを果たす牡馬は、おおよそ100頭に1頭しかいませんが、牝馬の多くは、競走馬引退後は繁殖牝馬として、余生を過ごします。
繁殖牝馬は、1年に1頭子供を産むことができます。
約10%の確率で、双子を妊娠しますが、そのうち90%は流産してしまうため、減胎を実施することが重要になっています。
仮に無事に双子が生まれたとしても、貧弱になってしまうため、サラブレッドのなかに双子はほとんどいません。
ちなみに、ベガという馬が双子を妊娠した際も、片方が減胎され、無事に生まれた仔馬が、後にアドマイヤベガという名前で、日本ダービーを勝利しました。
繁殖牝馬は、4~20歳頃まで子供を産みますが、活躍馬を輩出しやすいのは、8~16歳までと言われています。
牝馬はレース時の斤量が違う
牝馬は、牡馬に比べて体力的に不利とされています。
そのため、一緒にレースに走る際には、牝馬の方が牡馬より、斤量が2キロ軽くなるように設定されています。
最強牝馬を紹介
牝馬のなかでも、強い牝馬のことを「名牝(めいひん)」と言います。
ここでは、歴代の名牝たちを紹介します。
アーモンドアイ
2020年現在も、現役で活躍しているスーパーホース。
3歳時には、牝馬3冠のほか、従来のレコードタイムを1.5秒も更新する破格のタイムで、ジャパンカップを制覇。
4歳になってから、ドバイでもGⅠ制覇を成し遂げ、その名を世界にとどろかせました。
天皇賞秋、ヴィクトリアマイルも制し、これまで積み上げてきたGⅠ勝利は7つと、ディープインパクトなどと並ぶJRAのタイ記録に並んでいます。(2020年7月現在)
ジェンティルドンナ
獲得賞金は17億円超えと、歴代牝馬の中では1位!
牝馬3冠を達成したほか、ジャパンカップ2勝、ドバイシーマクラシック、そして引退レースの有馬記念と、大レースを勝ちまくりました。
特に2012年のジャパンカップでは、3冠馬オルフェーヴル VS 牝馬3冠馬ジェンティルドンナの、3冠対決にファンの視線は注がれました。
3冠馬同士の激しいデッドヒートが繰り広げられ、ジェンティルドンナが勝利。
年上の牡馬を跳ねのける、ジェンティルドンナの強さが光ったレースでもありました。
リスグラシュー
2019年の年度代表馬に輝きました。
GⅠ勝利数は4つですが、引退年となった2019年には、宝塚記念、オーストラリアのコックスプレート、そして引退レースの有馬記念を制しました。
特に引退レースとなった有馬記念は、上記のアーモンドアイなどを置き去りにし、一頭だけ別次元のレースをして圧勝しました。
「引退するのがもったいない…」と、その可能性をファンに感じさせました。
ウオッカ
史上3頭目、64年ぶりとなる、牝馬として日本ダービーを制覇した歴史的な馬。
GⅠは7勝と多く勝っていますが、そのうち6勝が東京競馬場でのもの。
「東京競馬場でレースをすれば、最強の牝馬」との呼び声も高いです。
ダイワスカーレット
ウオッカと同期のライバルホース。
当時、競馬ファンの間では、ウオッカとダイワスカーレットのどちらが強いか、という話題がよく上がっていた。
ウオッカとダイワスカーレットの最強牝馬論争が物語られる代表的なレースが、2008年の天皇賞(秋)。
天皇賞(秋)という現役トップレベルの馬たちが集う中、牝馬の2頭がワンツーフィニッシュ。
わずか2センチという着差で、ウオッカに軍配が上がりましたが、2頭はともに従来のレコードをタイムを上回って走っており、ウオッカもダイワスカーレットも、歴史的な名牝と認識された瞬間でもありました。
ブエナビスタ
GⅠは6勝。
2歳から引退する5歳まで、毎年GⅠを勝ち、息の長い活躍をしました。
最後の直線でみせる強烈な末脚は、多くのファンの心をつかみました。
秋華賞、ジャパンカップと2度の降着処分を受けるという、珍しい記録も持っています。
エアグルーヴ
近年の競馬で、「最強牝馬」の初代ともいえるのがエアグルーヴでしょう。
1997年に年度代表馬に輝いた馬で、牝馬が選定されたのは、1971年のトウメイ以来26年ぶりの快挙でした。
1997年には、天皇賞(秋)を制したほか、ジャパンカップ2着、有馬記念3着と、牡馬に交じっても牝馬は戦える!ということを証明しました。
牝馬限定のレースとは?
陸上競技や、競輪などのように、競馬にも牝馬限定のレースが存在します。
阪神ジュベナイルフィリーズ
2歳牝馬限定のレースで、毎年12月2週目に阪神競馬場で行われます。

2歳最強牝馬決定戦という位置づけで、過去にもウオッカやブエナビスタが、このレースを制しています。
桜花賞
牝馬3冠レースの1レース目で、3歳牝馬限定レースです。
毎年4月の2週目に開催!
阪神ジュベナイルフィリーズと同じ、阪神芝1600mで開催されます。
桜花賞については下記の記事も読んでみてくださいね。



オークス(優駿牝馬)
牝馬3冠レースの2レース目で、3歳牝馬限定レースです。
毎年5月の4週目に開催。
東京芝2400mで行われ、牝馬限定の重賞レースの中では、最も長い距離のレースになります。
秋華賞
牝馬3冠レースの3レース目で、3歳牝馬限定レースです。
1996年に新設されたレースで、毎年10月の3週目に開催。
京都芝2000mという、直線の短いトリッキーなコースで行われます。
そのため、上記げ挙げた名牝たちも、リスグラシュー2着、ブエナビスタ3着(2位入線も降着)、ウオッカ3着と敗れています。
ヴィクトリアマイル
2006年に新設されたレースで、4歳以上の牝馬限定レース。
毎年5月3週目に東京芝1600mで開催されます。
牝馬の多くは、春の大目標として、このヴィクトリアマイルを目指します。
2015年には、3連単の配当が2000万円を超える大波乱が起こりました。
エリザベス女王杯
現在は、3歳以上の牝馬限定戦として、11月2週目に、京都芝2200mで開催されています(2020年は、京都競馬場改修工事のため、阪神競馬場で開催)。
エリザベス女王杯では、3冠戦を終えてきた3歳馬 VS 4歳以上の古馬との対決が、最大の目玉になります。
また、海外から遠征してくる馬も参戦し、2010、2011年とイギリスのスノーフェアリーが2連覇を達成しました。
牝馬限定レースは、GⅠだけでなく、GⅡ6レース、GⅢ13レースのほか、新馬戦や未勝利戦、その他の条件でも存在します。
【ファクター別】牡馬と牝馬どっちが強いか比べてみた!
ここでは、牡馬と牝馬、どちらの成績が優れているか、を様々な項目で探ってみました。
データは2019年の牝馬限定戦を除く、各性別ごとの複勝率です。
牡馬には、セン馬も含みます。
芝レース
牡馬(♂) | 牝馬(♀) | 牡馬と牝馬の差 |
23.8% | 21.3% | 牝馬-2.5% |
芝レースに限定すると、牡馬の方が、やや優勢な結果に!
ダートレース
牡馬(♂) | 牝馬(♀) | 牡馬と牝馬の差 |
22.8% | 16.1% | 牝馬-6.7% |
芝のレースと比較しても、牡と牝の差が広がっており、パワーを要するダート戦の方が、牝馬は不利、と判断することができます。
確かに、上記で紹介した名牝たちも全て芝で活躍した馬で、JRAのダートGⅠを牝馬で勝った馬は、2015年のチャンピオンズCのサンビスタしかいません。
距離別成績
距離 | 牡馬(♂) | 牝馬(♀) | 牡馬と牝馬の差 |
1000m | 22.4% | 23.1% | 牝馬+0.7% |
1200m | 21.6% | 18.9% | 牝馬-2.7% |
1600m | 22.4% | 19.1% | 牝馬-3.3% |
2000m | 24.3% | 22.7% | 牝馬-1.6% |
2400m | 27.9% | 24.8% | 牝馬-3.1% |
唯一、牝馬が牡馬を上回っているのが、1000m戦です。
スピード勝負ほど、牝馬が有利、スタミナ勝負ほど牡馬が有利と言えるでしょう。
新潟の芝直線1000mのコースに限定すれば、2019年も牡馬が7勝に対し、牝馬が16勝を挙げています。
名物重賞、アイビスサマーダッシュでも、過去19回で、牡馬が7勝、牝馬が12勝と圧倒しており、数少ない牝馬有利のコースと言えます。
1番人気
牡馬(♂) | 牝馬(♀) | 牡馬と牝馬の差 |
66.0% | 63.2% | 牝馬-2.8% |
1番人気での信頼度でも、牡馬が優位です。
2歳戦
牡馬(♂) | 牝馬(♀) | 牡馬と牝馬の差 |
23.8% | 21.4% | 牝馬-2.4% |
成長が早いとされる牝馬は、2歳9月までは、牡馬と全く同じ斤量を背負います。
その後、1キロ…2キロ…と斤量の差は開いていきますが、2歳戦に限定しても、牡馬の方がやや優勢です。
GⅠレース
牡馬(♂) | 牝馬(♀) | 牡馬と牝馬の差 |
18.7% | 25.0% | 牝馬+6.3% |
GⅠレースに限定すると、牝馬の方が複勝率が優勢です。
これはアーモンドアイやリスグラシューのように、牝馬限定のGⅠレースをあえて使わずに、果敢に牡馬混合のGⅠレースに出走してくる馬が、勝算あっての参戦だからでしょう。
牝馬にも関わらず、牡馬相手に挑んでくる、ということは、相当な能力を秘めている、と陣営が感じているからに他なりません。
種牡馬別
産駒名 | 牡馬(♂) | 牝馬(♀) | 牡馬と牝馬の差 |
ディープインパクト産駒 | 36.7% | 34.9% | 牝馬-1.8% |
ロードカナロア産駒 | 30.2% | 30.3% | 牝馬+0.1% |
ハーツクライ産駒 | 31.1% | 24.2% | 牝馬-6.9% |
ハービンジャー産駒 | 21.0% | 23.9% | 牝馬+2.9% |
クロフネ産駒 | 19.8% | 22.1% | 牝馬+2.3% |
種牡馬によっても、牡馬、牝馬によって、成績が変わることがあります。
ここまで見てきたように、多くの条件下では、牡馬の方が成績が有利になりやすいです。
そんな中でも、ロードカナロア、ハービンジャー、クロフネといった種牡馬たちは、牝馬の方が優秀な成績を残しています。
ロードカナロア産駒の牝馬では、アーモンドアイ、トロワゼトワル、イベリスなど。
ハービンジャー産駒では、ノームコア、ディアドラ、モズカッチャン。
クロフネ産駒は、ホエールキャプチャ、アエロリット、カレンチャン、スリープレスナイトなどの名牝を輩出しています。
これはほんの一例ですが、種牡馬によっては、牝馬の方が走る!ということもあるので、牝馬を見るときは、父名も気にしてみると面白いかもしれません。
牝馬に乗ると強い騎手ランキング
馬と騎手にも相性があるように、牝馬の扱いがうまいと言われるジョッキーが存在します。
現調教師の松永幹夫元騎手は、ヘヴンリーロマンスやファレノプシスなど、JRAのGⅠ勝利全てが牝馬によるものでした。
また現役の福永祐一騎手も、JRAのGⅠは牡馬で16勝に対し、牝馬でも11勝を挙げています。
特に2004、2005、2007年には、ダイワエルシエーロ、ローブデコルテ、シーザリオでオークスを勝ち、「オークス男」とファンの間で言われていました。
ここでは、(牝馬での勝率ー牡馬での勝率)が高かった騎手のトップ15を紹介!
順位 | 騎手名 | 牝馬での勝率ー牡馬での勝率 |
1位 | 岡田祥嗣 | 7.4% |
2位 | 西村淳也 | 4.4% |
2位 | 西田雄一 | 4.4% |
4位 | 三津谷隼 | 4.2% |
4位 | 大野拓弥 | 4.2% |
6位 | M.デムーロ | 3.2% |
7位 | 蛯名正義 | 3.1% |
7位 | 水口優也 | 3.1% |
9位 | 岩田望来 | 2.9% |
9位 | 武士沢友 | 2.9% |
11位 | 岩部純二 | 2.8% |
12位 | 川須栄彦 | 2.6% |
12位 | 丹内祐次 | 2.6% |
12位 | C.ルメール | 2.6% |
15位 | 城戸義政 | 2.5% |
(敬称略。データは2019年、牡馬、牝馬ともに50回以上騎乗した騎手のみ)
「夏は牝馬が強い」は本当?
競馬格言のひとつに、「夏は牝馬が強い」というものがあります。
以前の記事でも触れていますが、真実としては、牝馬は夏に強いのではなく、冬に弱いというのが真実と言えそうです。
人間に例えてみても、女性の方が寒がりなことが多かったり、パワーでは男性が勝っていることがほとんどです。
そのため、競馬でも、寒くて、芝もパワーが必要とされたり、ダート戦の多い冬場は、牝馬が苦戦する傾向にあるのだと考えられます。
夏競馬についての記事はこちらもチェック!



まとめ
「牝馬は牡馬に勝てない」と言われていた時代は終わり、21世紀になってからは、ウオッカ、ブエナビスタ、ジェンティルドンナ、アーモンドアイ、リスグラシューが年度代表馬に選出されました。
「牝馬は強くなった」と昨今では言われていますが、条件によっては、まだまだ牡馬が有利な場面が多いのも実情です。
牝馬に関する知識を極めれば、競馬をより一層たのしめ、馬券にも活かすことができるでしょう!

